日曜日、

”最適化された受験マシーン”
ランニングをしている僕の頭の中で引っかかった言葉である。
なるほど、確かにそうである。
毎朝聞いているVoicyの番組、『荒木博行のブックカフェ』での一コマである。リスナーの中から代表者が相談者として登壇する、毎週日曜日恒例のコンテンツ。
今日の相談者の方は、”いまの時代、大学が持っている意味とは何だろうか”というものであった。荒木さんは、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部で教鞭を握っている現役の講師でもあり、学びデザインという会社を運営している起業家でもある。そんな荒木さんから出た言葉が、僕の中に深く刺さった。
相談者のお子さんは今年高校生になり、まだ高校1年になったばかりにも関わらず、すでにもう大学受験のこと、なんならその先の就職についてまで、怒涛のように情報が入ってくるという。
振り返ってみれば、自分達が子供だった時と比べて、今の子供たちがこなさなければいけない学習量は、計り知れないものがある。
学校からの宿題の量が多すぎて、1日でも休んでしまったものなら、そこからのcatch-upが難しく、それでついていけなくなって不登校になってしまう生徒もいるのでは、と相談者の方は危惧していた。
身体的にも、精神的にタフな子供に向けられたカリキュラムになっていて、そこから零れ落ちる生徒は確実にいるだろう。
だからこそ、少しでも大学受験の負担を軽減するために、少しでもお金に余裕があるような家庭だと、中学校から、もしくは小学校から大学の付属に入ろうとするケースも、ここ最近本当に増えてきたと思う。
そこで挙げられていたのが、SAPIXである。かの有名な中学受験専用の塾だ。実は、荒木さんの息子さんはSAPIXに言っていたのだという。
初めて授業を見学した時に驚いたのは、休憩がないこと。4時間なら4時間、ぶっ続けで授業が続く。
トイレに行きたくなった生徒は自由に言ってもらって構わないが、授業は止まらない。ノンストップで濃密な授業が行われているのである。
受験は、地頭の良さというよりも、傾向と対策をしっかりと行った家庭が勝つものだ。普通の公立学校に通っている限りは、中学受験対策は無理だろう。
だから、こういう専門的な塾があることは納得だし、むしろ必要不可欠かもしれない。
ところがだ。
決まったカリキュラムに沿ってみっちりと勉強をした結果、名門中学校に合格する生徒さんもたくさんいるが、その中の一定数は、そこで燃え尽きてしまうのだという。
なぜなら、勉強がやりたいと思ってやるのではなく、やりなさいと言われてやっているからだ。この呪縛からの解放は、一度味わったらもう戻れないのだろう。
そして、やりたい勉強をやっているのではなくて、これをやりなさいと指示されたカリキュラムをこなしていることも原因だろう。
要は、好きなことは何ですか?何に興味がありますか?と問われたときに、答えられることが、「勉強」だけなのである。
そりゃあ、受験という戦争が終戦を迎えたら、もう一生勉強したいと思わないだろう。
もちろん、受験勉強を通じて何かに興味を持つようになる生徒もたくさんいるだろうけど、ここまでハードに強制されていると、そうでもないと思う。
”よく頑張ったね”
この言葉は親のエゴだ。親が自分に対して言っているのか?と思ってしまう。そうしないと、かけた時間、かけたコストが報われないからだ。
よく頑張ったと褒めると同時に、その子の将来を摘んでしまった可能性だってあるのだ。
ここで冒頭の相談に戻ろう。
「大学がもつ意義とは何か」この問いに対して、荒木さんは内発的な学びを促進する場という風に答えていた。僕も納得だ。
学びたいとか、これをもっと深く知りたいとか、体験したいとか、そういう自分の中から溢れ出てくる興味を深ぼっていくのが、大学という場所だと思う。
そしてそれは、必ずしも学問だけではない。異文化交流やサークル、アルバイトだってそうだ。
決められたカリキュラムだけに従って生きることに慣れてしまうと、いざ社会に出た時に、何をしていいのか分からなくなるだろう。
そんな僕も、高校生までは優等生一本勝負だったから、大学生になり、かつリベラルアーツという何でも研究分野になってしまう場所に放り出された時、その最初の1年は気持ちがすり減ってしまったのを覚えている。
受験のために一生懸命頑張ること、それ自体は決して無駄ではないと思う。
ただし、そこから何か興味を見出しているのか、はたまた本当に嫌そうにしているのか、ここは親が見極めなければいけないだろう。
僕も、大学4年間塾の講師をやっていて、本当に委縮している生徒をたくさん見てきた。実家のピアノ教室でも、親に来させられている生徒ほど、ひねくれていたし、全く伸びなかったと母から聞いている。
その結果、勉強も嫌い、ピアノも嫌い、音楽も嫌い、、、。
これほどまでに溢れている豊かなものを、悉く嫌いになってしまう人生なんて悲しいじゃないか。
あなたの子供は、最適化された受験マシーンにはなっていないだろうか。
マシーンは電源が切れたら終了である。
あなたの手で、電源を引っこ抜いてはならない。
