火曜日、
なぜそんなに残業をしているのか
そう思ってしまう同僚が一人いる。僕だけがそう思っているんじゃない。話す人話す人、みんな口を揃えて言う。
「みんなで彼の仕事引き取ってるんだけどね」
「期日に間に合ってないよね・・・」
僕と同じように中途で入ってきた彼は、もともとベンチャー出身。
帰りの方向が同じなので前に一緒に帰った時に聞いたのは、もともと終電くらいまで働くような会社にいたということ。ただ、その分始業も遅くて、いわゆるIT企業特有の朝遅くて夜も遅い、そういうところでずっと働いていたのだ。
それも影響しているのかもしれない。
恐らくだけど、とにかく無駄な作業というか、キーボードを打っているように見えて、実はずっとバックスペースを打っているような時も結構あると思う。
マウスをいじっていると思ったら、ずっとスクロールしているような、そういう時もある。
ただ、自分がそういう状態にあるということさえ、実は気づいていないところがある。いい意味でも、悪い意味でも鈍感ということだろう。
鈍感力、実は働くうえで結構大事だと思っている。僕はその逆を行くから、本当に羨ましい。
一方で、そういう時間の使い方をしているのは、実は彼だけだということに対しても、気づいていない。鈍感だとは思うけど、それで周囲に迷惑をかけてしまったら、それはもう鈍感ではない。
20時過ぎ。一応定時は17時半。
長文のチャットがグループLINEに届く。とある企画の承認を頂きたいという内容であった。内容を確認するには、資料を読み込まないと判断が出来ない。そして、計算もしないといけない。
なんとその承認をできれば今日もらいたい、と書いてある。
本人は一切悪気がない。彼にとって20時過ぎはまだ日中レベルなのだろう。話せば普通にいい人だけど、これはよろしくない。
世界は彼中心に回っているわけじゃないということは、どんなに鈍感でも知っておくべきだろう。
ちなみに彼はもうすぐ40歳だ。