HONEST

齢31歳。音声コンテンツ好きの僕が、日々の学びや気づきを、文章とイラストで自由に記録していきます。

8月5日 窒息しない方法

土曜日、
 
朝の9時45分。JR山手線田町駅
まだ9時台なのに、これでもかっていうくらい性格の悪い日差しが、容赦なく道路に照り付け、地上に熱が溜まっていく。
暑い。
文字通り、こんな茹だるような暑さの中、田町駅西口からは多くの学生、それから学生の親と思われる人々が、ある方向に向かって歩みを進めている。中には、立ち止まって写真を取っている人も結構いるみたいだ。
 
今日は、慶應義塾大学オープンキャンパスらしい。三田キャンパスだけなのか、他のキャンパスも同時開催なのかは分からないが、引っ切り無しに学生とその親が正門に向かって歩いている。
 
近所という近所でもないが、土日は割と慶応の三田キャンパス付近を通過することが多く、僕の歩みの方向に、今朝、この景色を見ることが出来た。
 
この中の何人が来年慶應生になるかは分からないけど、表情がうかがえた親子はみんな、明るい顔をしていた。
 
今から、10年ちょっと前、僕も大学に入学した。
小学校から高校まで、埼玉の田舎の公立学校に一貫して通っていた僕にとって、私立の大学に入学することは憧れだった。オープンキャンパスでの雰囲気に魅了され、
「ここだ!」と思ったのだ。
 
入学後、一気にカルチャーショックに苦しめられることになる。
 
「明日の夜飲みいかない?じゃあ明日は?あと、明後日も飲み会あるけど来る?」
「土日に多摩の方行かない?車出すよ」
「夏休みの海外短期研修、とりあえず申し込まない?」
 
大学生って、こんなにお金持ってるんだっけ?
大学生って、バイトしてないんだっけ?
大学生って、もうみんな車持ってるんだっけ?
大学生って、親からお金もらってるんだっけ?
大学生って、夏休みバイトするんじゃなかったっけ?
大学生って、、、、。。。
 
もうついていけないかも、入学早々、あまりの経済環境の違いに震えあがっていた覚えがある。学食があるのに学食をなぜつかわないのか、わざわざ1000円出すのか。
 
僕は極力大学に居ないようになり、1年生の間はとにかく家⇔大学⇔バイトですべてスケジュールを埋めていた。
この息苦しさは一体何なんだ、と思っていた。
 
ただ、ある日転機が訪れる。それは、インカレという、いわゆるいろんな大学生が集まって、大学の外に組織を構えている団体の存在がある、ということを知ったこと。その中でも、とても興味があるものに出会えたこと。
 
深く深く入りこんでしまった、蛸壺から抜け出すことが出来た瞬間だった。
 
もちろん、大学の外にだって、上には上がいて、あらゆる金持ちや偉業を成し遂げている学生は山ほどいる。でも、みんな何かしらの思いや違和感があって、大学の外に価値を見出したっていう共通項が、互いを引き寄せていた。
 
そんな中で、お金・偉業・海外経験・語学力・容姿・学歴、、、こういう簡単に測れるステータスには天井がないということを、思い知らされる。
ただ、同時に、スカッとした潔い諦めも覚えることが出来た。
 
羨望とか嫉妬とか、そんなものをエネルギーに頑張ったって、どうにも敵わない同年代が、うじゃうじゃいるのだ。それを知ってから、むしろそういう人に出会うと「尊敬」しかしなくなった。そして、その背景を聞くことがとても楽しかった。
 
同時に、実は自分の何気ない知識や経験が、ものすごく貴重な資産になっているということにも気づけた。例えば、人生で45kgの減量に成功したっていうことは偉業なんだってことに、このタイミングで気づけた。
 
不思議なことに、こういう思考になると、あれだけ嫌に思っていた大学を、もっと大きな、広い視野でみることが出来るようになるのだ。いわゆる鳥の目で上からみることができるイメージ。
 
すると、実は今まで見えてなかったこの部分に、自分がまだ知らないとても興味深いものがあるっていうことが分かったり、知らない制度、頼れる制度が山ほどあるんだっていうことにも気づける。そしてそこに集ってくる学生がまた面白いということも分かる。
 
今日見た光景と、最近読んでいたこの本から、自分が大学生の最初に感じたカルチャーショックを思い出し、息が詰まるようなこの世界で、窒息しない方法としてちょっと書いてみた。