日曜日、
ここ数日、生きづらさを扱うコンテンツに触れる機会が多い。そんなコンテンツに触れ度に、この社会はマジョリティが快適に生活できるように、設計されているんだなぁと実感する。
例えば同性愛について。
パートナーシップ制度という仕組みが整い始めたけれど、田舎の方に行けばまだまだ偏見もあって、自分に正直に生きていくことは難しい。異性に恋愛感情を抱かないのに、周囲からは結婚をせがまれ続ける。
もし家族に伝えたとしても、
「勘違いしてるんじゃない?まだ時間はあるから考え直しなよ」
そうやって返された日には、たまったもんじゃないだろう。
一番身近な人に跳ね返された時、人は絶望を感じるのだと思う。絶望は、望みがないから絶望と書くのだ。だから、もう死んでしまいたいと思う人だって少なくない。
このポッドキャストで、ご自身も同性愛者の当事者である加賀直樹さんは、以前お付き合いをされていた男性を失くした。自死だ。理由は、上記の通りである。
性的嗜好が異なるだけで、これほどにまで社会は生きづらいものになる。だから、加賀さんの周りには、自死を選んだ人が少ないという。
48歳の加賀さんの周りだけで、自死を選んだ性的マイノリティの方が5人くらいいる、とのことであった。
そんな環境で生活をしているからこそ、加賀さんからのメッセージはストレートだった。
「生きづらさを感じている性的マイノリティに方々に対して、かけるアドバイスは何にもない。ただ、一つだけ言いたいのは、”生きてほしい”。”生き続けてほしいと思います”。」
加賀さんは、同じ性的マイノリティの当事者として、きっと他の性的マイノリティの方々の苦しみを想像できる立場だと、僕は思う。それでも、加賀さんが育ってきた時代や環境と、今若くして苦しんでいる人達が置かれている環境は全然違う。だから、理解をしようと努力しても、100%理解できるということはない。加賀さんは、どこまでも一つ一つの性に対して真摯だ。だからこそ、
自分がアドバイスできることは何もない、でも、どうかどうか生きてほしい。そう言ったのだと思う。
死んでしまったらそこで終わりだけど、生き続ければ嫌なことと同じように、ハッピーなことだってある。それが支えてくれるかもしれないから、自分から人生を終わらせるのはもったいない、僕もそこは同意する。
この放送を聞いて、お馴染み「Over The Sun」でも、ゲイであることを母親から受け入れてもらえなかったお悩みメールを送ってきた中学生を取り上げた回を思い出した。
その中で、堀井さんが後半で数回、噛みしめながら発した言葉がある。
「死なないで、死なないで、死なないで」
堀井さんも、スーさんもヘテロセクシュアルで生まれつき異性愛者である。だから、どれだけ同性愛者を受け入れようと口では言っても、心根からは理解することは出来ないと、二人とも認めている。
だから、二人からも具体的なアドバイスではなくて、どうか死なないでと強くメッセージを送っていた。前述した加賀さんと同じように、人生本当にしんどくて死んでしまいたいと思ったことも何度かあったけど、生きていれば何とかなることだってある、と。
そして、この放送回の翌週。同じように性的マイノリティとして苦しむ世界中のリスナーの方から、番組史上最多となる応援メッセージが届いたという。番組内でも沢山紹介してくれていたけれど、どのメッセージも、ささしょうさんに寄り添うような形で、一緒に生きていこう、という想いが溢れていた。
こういった性的マイノリティの中でも、いわゆるLGBTQ+という風に語られる方々がいる一方で、社会的には認められない性的嗜好を持ってしまう人々だっている。それを描いているのが、朝井リョウさんの『正欲』という作品だ。
小説でもAudibleでもこの作品を鑑賞した。もちろんそういった性的少数者のことを取り上げているけれど、一方でマジョリティを”少数者以外全て”のように、雑に捉えていることへの警鐘も鳴らしている。
どうしても、同性愛者の人から見たら、異性愛者はみんな同じ”異性愛者”というグループに見えてしまう。でも、本当は、もっともっと細かいメッシュがあって、十把一絡げにそんな風には言えないのだ。
ここまで性的少数者のことを書いてきたけれど、僕だってその一人。男性も女性もどちらでも性的な興奮は覚えることはできるけど、両性共に「愛おしい」という感情が湧かない。
性という極めて個人的なことだからこそ、本当は一人ひとりみんな違うということに、自覚的でありたいと思う。
もちろん、性的少数者の話だけではない。他の少数者と、それ以外をマジョリティとする雑さも同じだ。
身体的な障害がある人、精神的な障害がある人、両親が居ない人、片親の人、家がない人、仕事がない人、、、。数えてみればきりがない。そして、そこに置かれていない人を全てマジョリティとするのも、雑過ぎる。
こういうことに自覚的であるとき、やっぱり他人に対してアドバイスをすることは、きわめて難しいと思う。
だからこそ、「生きてほしい」「死なないで」。
理解できないということをちゃんと理解している人から発せられる、こういうメッセージはとても温かくて強い。
2024年、僕は加賀さんや堀井さんのような姿勢をもった人になりたいと思う。