HONEST

齢31歳。音声コンテンツ好きの僕が、日々の学びや気づきを、文章とイラストで自由に記録していきます。

6月19日 性急性を伴って

月曜日

 

今朝も晴れている。ただ、この土日と大きく違うのは、空気感。なんだかあのじっとりとした重く湿気を含んだ空気ではなく、爽やかという形容詞がピッタリ当てはまるような、そんな空気だった。

こんな数日の間に、ここまで天気が変わるって本当に日本だなぁと思う。月曜日に天気が悪いと、なかなかやる気が起きないのだけれど、今日はむしろ努力しなくてもやる気を出させてくれるような、そんな気温だった。ただ、僕はこの土日、どっぷりと本と音楽に浸かってしまったため、生産的・効率的・主体性・チームワーク、みたいな世の中で言われる大事なことを一気に求められるような、そんな日常に戻るのには時間を要した。

 

この土日でもだいぶ多くの本に触れたのだけど、一冊読み終わったものがある。高山真さんが書いた『エゴイスト』だ。俳優の鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんが演じられた映画としても有名である。僕も性的マイノリティの一人として、この作品にはとても興味を持っていた。ボリュームもそこまでなく、読みやすいからこそ、後回しになってしまって、読めていなかったものだ。

自分自身の体もボロボロになっていくだけでなく、もともと持病を抱えた母を支えて暮らす主人公の恋人の龍太、小さい頃に最愛の母親をなくし、性的マイノリティに理解のない田舎を飛び出して都会で暮らす主人公の浩輔。

いつも心のどこかに寂しさを抱えながらも、給料、キャリア、洋服、住居などでそれに蓋をして暮らしていた浩輔にとって、龍太との出会いは衝撃的なものだった。この出会いを逃すまいと、彼の性急さが感じられた。

一方で、龍太も、病弱な母を抱え、自分は風俗で働き、このままの生活をずっと続けていくことはあまりにも未来がないと思っていたと思う。

 

二人にとっては時間がなかった。

 

「嬉しい」という感情を、体で大きくいっぱいに表現したことはありますか?

「悲しい」という感情を、体で大きくいっぱいに表現したことはありますか?

「愛おしい、大好き」という感情を、体で大きくいっぱいに表現したことはありますか?

もし、そういった感情を素直に表現できないとなったら、あなたはどうしますか?

そんな状況で、熱烈に愛おしい人に出会い、その人が嬉しいと思ったことは自分はそれ以上に嬉しいし、悲しいと思ったら、自分はもっと悲しいっていう感情が生まれた時、そんな相手を心の底から大事にしたいと思うに違いない。

 

僕は、そういう感情がない。というか、苦手なのかな?言葉や表情でそういう気持ちを爆発させることが苦手。だから、きっとこれは運命だったと思うのだけど、気づいたらピアノを弾いていて、ピアノで表現することはとても得意だった、というかピアノでしかうまく表現できなかった。

それと同時に、僕は音楽から伝わるこの感情が溢れる感じ、それから迫る感じ、そして焦る感じみたいなことに敏感になった。

 

この小説を読みながら、聞いたリベラのFar Away。彼らは決して感情が爆発しているわけではないし、むしろその逆。なんだけど、彼らの声は永遠ではない。変声期を迎えたら卒業だからだ。今しかないそんな天使の声を、体いっぱいに優しく、でも性急さを伴って表現している。そんなイメージを感じる。

 

このイメージを頭に抱きながら、『エゴイスト』を読んでしまった僕は、涙が止まらなくなってしまった。

 

小説も音楽も、どっちもお勧めなのでぜひ紹介させていただきたい。

 

youtu.be