日曜日、
目の下のたんこぶ。比喩ではない、本当だ。僕は右目の下にたんこぶを飼っている。
「ほらここ、見える?左側と比べてみると全然違うでしょ?こう、ぼこって」
年明けに撮ったレントゲン写真を見て、先生が言う。
顔面の話ではない、顔の内側の話である。副鼻腔炎とはちょっと違うけど、ちょうど目の右目の下、こちらから見て鼻の右側に、もこもこもこっと瘤みたいな突起が映っている。
「右上の虫歯、ずっと放置してたでしょ?それが原因で膿が炎症を起こしちゃってるんだよ。よくここまで何も起きなかったね。頭痛くなかった?目とか霞んだりしなかった?」
今なんて言った?頭痛だって?目が霞むだって?両方だよ両方。
2週間前に右下の親知らずを抜いた。それから3日間くらいは患部が痛いというか、違和感があった。でも、その痛みが引いた頃くらいからだろうか。なぜかランチを食べたあとくらいから、毎日右目の下あたりがズキズキと痛んだ。
そして、もっと前から右目が霞む、右目だけコンタクトが外れやすいという症状があり、これは一体なんだろうと思っていた。働き過ぎだ、疲れだ疲れ、そう言い聞かせてずっとやり過ごしていた。ちょっと高い目薬や漢方エキス入りの目薬を買って対処療法を繰り返していた。
そんな状態で歯医者に行った矢先、言われたことがこれ。ここまでドンピシャだと逆にテンションが上がってしまい感動すら覚えた。むしろ視界がクリアになった。
虫歯を治してすぐに東南アジアに移り住み、すぐに銀歯が欠けたにも関わらず、その分を放置していた。今からもう10年も前のことだ。
「自分の自然治癒力」
「カルシウムが取れる食品食べて、自分でどうにか治せるわ」
そう言い聞かせた結果がこれである。自分ひとりじゃどうにもならなかったし、むしろ悪化させてしまったのだ。もう右上の歯の部分はインプラントにするしかなく、その準備を進めている。そのためのレントゲンで発覚した膿であった。
僕は小さい頃から、自分ひとりでどうにか解決しようという癖があった。その時、必要になるもの、それは時間であった。もともと究極的にマイペースな性格だから、1人で自分のスピード&テンションで取り組むことは好きだ。
でも、例えば勉強。新しい公式も自分で参考書から一から学んで受験に備えたから、それはそれはとてつもなく時間がかかり、何を削るかというと睡眠時間だった。
例えばピアノ。ピアノ講師である母から言われたことは右から左に受け流し、僕が小さいころから聞いていた羽田健太郎さんのCDの音を自分なりに真似るように、ほぼ独学を貫き通していた。同じように、とてつもなく時間がかかり、何を削るかと言ったら睡眠時間だった。
自力でやることの良いことは、ある一定のラインを超えた瞬間に、そこから先全てがびっくりするくらいスムーズに進むのである。
あれだけ数学ができなかったのに、ある瞬間から数学が大好きになるし、ピアノもそんな感じだった。
でも、1人の力じゃ絶対に超えられないこと。それは相乗効果によって生まれる、更に一歩先のイノベーションである。
大学受験くらいまでは一人の力で超えられないものはなかった。
でも、海外生活、仕事、ピアノ、こういった領域では確実に自分の力だけでは超えられない一線があることを本当に実感している。
「ほっっんとうに、1人で抱え込み過ぎないでね。あなたの性格なら絶対みんなが助けてくれるから」
11月に産休に入った直属の上司、1月末で退職した同僚、たまにランチ一緒にしている同僚から、口をそろえて言われることだ。
話を膿の話に戻そう。
たしか、1人でできるもんだっけか、そういう子供向け番組があったよね。でも、1人じゃできないもん、世の中そればかりである。
もっと周りに頼る、それができていたら顔に膿を抱えることもなかったかもしれない。インプラントにする必要もなかったかもしれない。
自律とは頼る先を増やすこと。その通りだ。自分ひとりでどうにかしようとする気持ちは大事だけれど、それによって超えられないこと、解決できないことの方が世の中多い。
仕事においても、そして自分自身の体においても、もっと頼らなきゃ。。。実感した。
そういうことが改めて学べる本をちょうど今日読み終わったから、ここに紹介をしておきます。そして、この本の著者がゲストとして出ていた朝日新聞ポッドキャストの回も、今日ちょうど聴いた。色々とタイミング良く僕に頼ることの大切さを実感させてくれている。