月曜日、
(猫のように丸くなろう)
「すみません、もし時間あった
らでいいんですが、この資料チェックしてもらえないでしょうか」
同僚から資料チェックの依頼が入った。僕とその同僚は、部下と上司の関係でもなければ、リーダーとメンバーという関係でもない。むしろ、社歴でいったら、僕の方が後輩にあたる。
彼女が持ってきたのは、今週金曜日に開かれる月例の経営会議の資料。
なるほど。
僕は、ちょうど2か月前にこの経営会議に参加したのだ。それで、経験者として資料を見てほしい、ということが依頼をした背景だったみたいだ。
この経営会議は、社長に対して、各事業部からその月の状況を報告する会議だ。営業部門であれば、自分たちのセクションの売上状況とトピック、マーケティング部門であれば、プロモーションやデータ分析などを報告する。1人の発表時間は、かなり短く、しかも、持ち時間終了まで20秒前になると、卓上ベルを鳴らされる。要点をまとめて簡潔な資料&発表である必要があるのだ。
拝見したところ、「ここを見てほしい」という箇所が一目で分かって、どこを強調したいかが分かる資料だった。ただ、そこを見過ぎてしまうがあまり、社長が知っておくべきことが見えづらくなっているようだった。
「やっぱり、そうですよね。それ、意図的なんです」
なるほど、そう来たか。つまり、発表者側が注目してほしいポイントを強調することによって、敢えて分かりづらくしているのだ。これは、上司にチェックしてもらう時に指摘されるなぁと思ったので、それとなーくその部分を指摘。ただ同時に伝えた。
「資料なんて、当たって砕けて丸くなったくらいが、ちょうどいいんだと思います」
そういうと、彼女はなんだか妙に納得したような感じで、満足そうに自分の席に戻っていった。
実は、この言葉。結構他のケースでも使っている、というか僕自身が方針として掲げていることでもある。
キャンペーンの企画や、プロモーションの企画、広告媒体のプランニングが主な仕事の僕にとって、考えたことが一発で通るなんてことは、ほぼゼロに等しい。ただ、後になって考えてみると、自分が最初に提案した企画アイデアは、だいたい何かに欠けていたり、重要なポイントが満たされていなかったりする。
今日も、チームのマネージャーに対して、SNSで実施するプロモーションのコンセプトを説明していた時、
「ごめん、前提から違うも。ちょっと最初に戻って」
と一蹴されてしまった。こういう時に、僕は思うようにしている。
「企画なんて、当たって砕けて、そして丸くなったくらいがちょうどいいんだ」
実は、僕の後輩が、ちょうど12月のキャンペーンのプランニングをしていて、それを具体化させる開発部門と、数日前から本格的に取り組み始めた。
だが、ことあるごとに、開発側からは、
「かけるリソースに見合うだけのリターンあるの?」
「そこに労力かけたときに、どれくらいのインパクトあるの?」と、色々指摘をもらっている。
後輩にも、ちょうど伝えたところだった。
当たって砕けて、何度も砕けて、丸くなるくらいまで磨かないと、企画なんて言えないのだ。ただ、それが企画職の宿命だと思うから、その楽しみを感じられるようになってくれたら嬉しい。
と、こんなことを書いている僕も、さっき広告代理店側から、やんわりとダメだしのチャット入って萎えているところだ。
頑張ろう。