土曜日、
「いや、参った。びっくりするほど、面白い」
前野ウルド浩太郎著『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社)
この本を読み終わっての感想である。
バッタの研究をしにアフリカのモーリタニアに訪問&滞在していた著者の実体験が記録されている本である。
一回もアフリカ大陸には足を踏み入れたことはないのだけれど、まるで自分も一緒にモーリタニアに行っているかのような、そんな旋風に巻き込まれるような読後感だ。
この本の存在自体は前から知っていた。ただ、一番やってはいけない、タイトルだけ見て読まないと判断する、という愚行によって読むことを避けていた。
私は、前野氏のポジティブ思考に大変感銘を受けた。
ポスドクとして崖っぷちに立たされているという状況であり、経済的にも精神的にも決して安定しているとはいえない環境下で、ここまでポジティブに物事を捉えることができるのは驚きだ。
モーリタニアという、日本とは全く違う環境の中で、あり得ないトラブルが続く。
現地で一緒に研究を手伝ってくれるバディが、実は給料は過剰請求していたこと。
バッタの研究に来たのに、生きたバッタが全然手に入らないこと。
砂漠での屋外生活。
現地の子供達の襲来
ハリネズミとの共同生活。
ノミが家に大量発生すること。
サソリに刺されたこと。
もう上げればキリがない。絶対、本には書けないようなトラブルがもっとあったと思う。
でも、度重なる未知との遭遇を、なかば楽しんでいるかのような雰囲気で切り抜けていく。
もちろん、バッタ研究で成果を上げないことには、日本に帰れないという覚悟や、そもそも昆虫研究への熱が高いということも多分に影響していると思う。
ただ、彼の臨機応変さと、ポジティブ思考を支えたのは、紛れもなく彼の周りの人達のサポートだったと思う。ドライバー兼助手の現地人や、バッタ研究所の所長さん。
みんな一癖も二癖もあるけれど、いつも著者を支えてくれる、優しい人々という印象を受けた。優しいだけじゃなくて、強さも持ち合わせている。そして面白い。
こういう人間関係の土台があったからこそ、厳しい環境下であっても、研究を続けられたのかなと思った。
僕は、この著者の前野さんみたいな、何か一つのことを研究したい!みたいなテーマは持っていない。ただ、こんな風に一つのテーマを追いかけ続けている人は、どちらかというとレアだと思う。
一方で、もう一つ僕に欠けているもの。
それは支えてくれる仲間、バディだ。
僕は、何かこれだ!と感じるものがあった時、1人で走り続けてしまう傾向がある。
この本を読んで、1人でやるには限界があると悟った。
アフリカでの生活、フランスへの渡航、日本への帰国、
本当にバタバタな生活を送っていた中でも、彼の周りにいた現地の人々、そしてご自身のご両親をしっかりと気にかけて、ちゃんと言葉でそれを伝えていたことが、素晴らしいと思った。
身近な人を大切にできなければ、その外側に居る人なんて大切にできない。
前野さんから学ぶことは、本当に大きい。