月曜日、
三浦しおんさんの小説『舟を編む』(2011年 光文社)。
宮崎あおいや松田龍平がメーン出演者となって映画化もされた、超有名小説だ。
この小説の中で、松田龍平は辞書編集部の一員として働く。
特徴的なのは、辞書編集部の人達が、どうやって日々新しい言葉、それから定義に出会っているかを、「用例採集カード」を用いながら、ユニークに、かつ印象的に描いている点だと思う。
何気ない日々の中に、新しい言葉や定義、使われ方が眠っている。
気づいた時に、すぐにメモが出来るように持っておくもの、それが「用例採集カード」だ。
なぜこのエピソードを想い出したか。
それは、実はとても身近なところで、このカードのようなものを活用している人を見つけたからだ。
僕の直属の上司である。
先日から綴っている通り、僕の直属の上司は、あと約2カ月で産休に入ってしまう。
それが、とても、とても悲しいということは先日書いた。この悲しみは、まだまだ続いている。
だが、無情にも時は過ぎていく。悲しみに耽る暇さえ与えず、引継ぎは次々と実施されていくのだ。
今日がその初日。
これからは、マネジメントの領域に関わるということで、その極意的なものをシェアしてくれた。その中で、さっき紹介した「用例採集カード」の話が出てきたのである。
チームメンバーの悪いところは書かない。
普段の仕事やミーティング、プレゼンなどで、チームメンバーの良い部分や才能が垣間見えた時、用例採取として、そのカードに記しているのだという。
例えば、あるメンバーに対して。そのメンバーは、まだ社会人歴が浅いということもあり、毎回すぐに模範解答を聞いてくる。ミスが起きないという意味ではいいかもしれないけど、一方で自分の頭で考えてほしいとも思っている、とのこと。
そこで先日、
「これはどうやって対応すればいいですか」というクエスチョンに対して、
「あなたはどう思う?」と返したそうだ。
すると、ちょっと調べますといって自分で考え始めたらしい。
それから短時間で膨大な過去事例とデータを洗い、
「これらを参考にすると、私はこれがいいと思います」と主張してきたとのこと。
これまで気づかなかった、そのメンバーの才能が見えて、それをすぐに用例採集カードに書いたとのことだった。
この用例採集カードの効果はすごい。今日みたいに、とっさのタイミングですぐに過去のエピソードを思い返すことができるのだ。
そして、このカードでの記録を始めてから、メンバーの良いところに気づくアンテナが立ったとのことであった。
何と素敵な話だろう、僕はそう思って、早速この日記を書く前に、用例採集カードを作ってみた。
これからは、毎日が採集の日々だ。