土曜日、
月に一度のヘアサロンの日。本当はゴールデンウィーク期間に行こうと思っていたけれど、絶対に混んでて疲れてるだろうなと思い、1週間ずらすことにした。
予想が的中だったのかどうかは分からないが、いつもの彼はまるで飛ぶように元気だった。
元気だったのは雰囲気だけではない。見た目が元気だったのだ。
「ブリーチめちゃくちゃやったんですよ」
ニコッと笑いながら話す彼の髪色は、白。ただ、彼曰く「プラチナ色」らしい。実は、複合的に色を重ねて、白に近い金色、かつ艶出し材も入れて仕上げているらしい。さすがは専門家である。
これまでも度々髪色を変えているようだったが、今回の髪色チェンジは大きく出ていた。でも、とてもお似合いだ。もともと、細長の切れ目で身長も180センチくらいある彼。道産子というもともあって、肌も白い。
「なんかパッと見た感じだと、KPOPアイドルみたいですね(棒読み)」と話すと、同い年で空気も読める彼は、同じく棒読みで「これまで言われた褒め言葉で一番嬉しい」と返してきた。こういう温度感、いいなーと思う。
彼も今年に入ってから色々あった。インフルからの肺炎、肺炎からの肋骨の疲労骨折、そこからのコロナ罹患(2回目)。インフルもコロナも、体質的に予防接種ができない彼は、きっとかかりやすいのだろう。
多分、何かが彼の中でぶっ飛んだのかもしれない。とはいえ、プラチナカラーにしておくのは1か月くらいの予定らしい。いい時に来た。
散髪等々が終わって自宅に帰ると、もう一つぶっ飛んでるものを発見した。
部屋のカーペットである。今日は天気もいいし、風も吹いているから乾きやすいだろうと思って、ずっと洗ってなかったカーペットを洗ったのだ。
ない、バルコニーに干しておいたのにない。下を覗く。道路に白い洗濯ばさみが落ちているのが見えた。
間違いない、風だ。その後周囲を少し歩いてみたけど、ない。軽い素材だったし小さいサイズだったから、これは間違いなく飛んでいったのだと思う。
カーペットもぶっ飛びたいお年頃だったのかなと、あんまりショックに感じていない自分に少し驚く。そんな折に、もうこうなったらと思って一気に部屋の掃除と模様変えを済ます。注文していた絵画やツリーが来週やってくるから、迎え入れる準備としてはちょうどいい。
最後にワックスをかけて終了。時刻は23時。ま、家に帰ってきたのが21時だから、この時間は当然だ。
と、ふと視界の片隅に黒い物体が見えた。カメムシである。
指に乗っけてみたら、親指の第一関節くらいまであった。結構でかい。彼もぶっ飛びたいお年頃だったのかもしれない。
そして、そっと掌に移動させて、風がビュンビュン吹いているベランダで、少し手を上下に動かすと、また闇の中に消えてっていった。
みんな、ぶっ飛びたい年頃なのだ。
そんな僕も、グルングルンのパーマにしてみた。ベートーベンほどではないが、久々の強めのパーマだ。来月は普通のカットになるから、気持ちが変わらなければブリーチをしてみようと思う。
ぶっ飛びたいお年頃、だ。御年31歳、乙。