金曜日、
「明日出社する?この前教えてくれた本、貸してくださいよ」
昨夜21時頃の話だ。熱は下がったものの、まだ体のだるさと喉の痛みが残っており、どうしようかと思っていた時だった。同僚の一人からLINEが届く。
ちょっと前のこと。
夕飯を食べ終えた後、執務フロアに戻る前に彼と近くの本屋を物色。なんかお勧めないんですか?と問われて、ふと平積みになっている本を見てみると、びっくり。
自分でも全然意識していなかったのだが、あれも、これも、それもという感じで、結構な本の数々を僕はすでに読んでいたのだった。
「これは、〇〇みたいな本。で、おんなじ作者がかいたこっちの本は、ちょっとテイストが違うから、お勧めはこっちかな。あ!そういえば、この隣の本もよかったよ、疲れているときでも全然OK。でも、割とハウツー本みたいな本がすきならこっちかな。ただ、立場が違うからあまり共感できないかも。そういう場合は、こっちのほうがいいかも、まあ俺はあんまり好みじゃなくて、どちらかというとこっちの・・・」
ストップ!
制止が入る。お勧めを聞いているのに、これじゃあ全て買わないといけないじゃないか。そんな茶番でガハガハ笑いながら、執務室に戻る、そんな夜だった。
そして昨夜である。いま楽天でスーパーセール中らしく、どうせなら本を一冊買いたいらしい。なるほど。
結局僕が選んだのは、近内悠太さんの『世界は贈与でできている』だ。学部生時代に読んだ研究作品の次にブックイヤーをたくさんつけた作品だ。そして、普通に読みながら泣いてしまった作品でもある。
写真を撮って彼に送る。これいいよ、おすすめ、と。
お、そしたらそれ貸してくださいよ!と秒速で連絡。
正直お勧めの本って難しい。本当にいいと思う本は人それぞれだから。そして、同じ本でも、その時の状態やタイミングによって響くかどうかは全然違う。だから、今回お勧めした本が彼に響くかは全く分からない。
ただ、お勧めする本がどういう本なのかによって、その人の価値観をシェアしてもらえるような気がする。小さいころ、毎年クリスマスプレゼントは絵本だった。今考えれば、動物や植物を大事にする考え、等しく優しい気持ちを持つこと、素直であること、こういうことを大切にする母親の考えは、直接ではなくてプレゼントされた本から受け取った考えだ。
価値観の共有。それ自体がいいかどうかは分からない。
彼の感想が楽しみだ。