HONEST

猫好き・植物好き・ラジオ好きの齢32歳。日々の学びや気づきを、ちょっとだけ得意な文章とイラストで自由に記録していきます。

10月5日 豊かな人生とは

土曜日、

 

 

最近読んだ2冊の本。テーマはそれぞれ全く違うものなのだけれど、何だかそれぞれの主張を抽象化すると、根本には共通する思想があるような気がして、一つの着想を得た。

一つ目の本は、三宅香帆さんの『なぜ働いてると本が読めなくなるのか』(2024 集英社)である。メディアを中心に幅広い界隈で話題をさらっている本で、僕も発売からずっと気になっていたやっと読むことが出来た。

三宅さん自身、元々は会社員としてバリバリ働いていた人であり、後書きにも書いているが、どちらかというワーカホリック体質な人である。実際に、彼女自身が就職後に読書が出来なくなった実体験から、その背景を深堀したのが本書である。

彼女がこの本で推奨しているのは、半身で働くことである。どうしても100%仕事に精を出していると、それ以外のことに時間もエネルギーも割くことが出来ない。みんなが半身で働けるような社会になれば、読書をする余裕が生まれるのではないかと、問いかけている。どちらかと言うと、彼女が言う読書というのは、自己啓発本のようなものではなくて、自分の趣味嗜好に沿ったものや、小説のようなものを指している。

僕も、三宅さんと同じ文学部出身の人間だから、彼女の主張はとても良く分かる。文章を目で追いながら、物語の世界に身を投じている時が、一番充実している時間だと感じている。

ただ、平日はどうしても小説を読むのが難しい。全身を仕事に投じていると、小説に割く脳内シェアがゼロになってしまうのである。この本は、彼女がWeb媒体で連載していたものをまとめたような内容になっており、その当時から非常に反響があったようだ。それほど、読書ができないと憂いている人は多いのだろう。

 

そして二つ目の本。それは、荒木博行さんが最近出された本『裸眼思考』(2024 かんき出版)である。

裸眼思考を理解するには、その対比として出されているレンズ思考から想像したほうが早いと思う。レンズ思考は、その言葉の通りレンズをかけて物事を見ることだ。具体的には、目的や目標というレンズをかけて、そこに速く効率的に到達するためにはどうすればいいのか、と考える思考だ。ビジネスでは必須のスキルだと思う。一方で、その目的に向かってまっしぐらということになるから、その周りにあるものを全てノイズとして削ぎ落すことになる。

例えば、自宅から最寄り駅の道を考えてみる。あなたは急いでいて、10分後の電車に乗ることが今のゴール、つまり達成すべき目標だ。一目散に駅に向かうあなた。例えば季節は春で、桜が咲いていたとしても、今のあなたにとっては、それはノイズでしかない。猫が居たとしても、それもノイズだ。

目的や目標だけを見つめていると、その周りにある驚きや感動も一切見なくなってしまうのだ。これに警鐘を鳴らすのが裸眼思考のベースにある。

 

と、ここまでつらつらと2冊の概要を書いたけれど、ただ楽しむたむための読書も、裸眼思考も、こうやって考えると、私たちの人生を豊かにするためには、なくてはならないものだと改めて感じた。

両方とも、目的や目標に向かってまっしぐら、とは相反する考え方である。忙しくしていると、ついゴールからの逆算で、ビジネスの本を手に取ったり、効率を重視したスケジューリングをしてしまう。

でも、それって人生を豊かにはしなそうだ、と思った。あとで振り返った時、層が幾重にも複雑に積み重なって人間が形成されているのは、間違いなく読書や裸眼思考を通じた生活をして人だと思う。

この2冊を読んで、そんな共通点を見出した。

 

ちなみに、三宅さんと荒木さんは、仲良しである。これもまた、なんかわかる気がする。