日曜日、
「お父さん、インフルだって」
母から夕方に一通LINEが入った。このメッセージだけでは、これを肯定的に捉えているのか、否定的に捉えているのか判断がつかない。こういう時、たとえ家族が相手であっても、テキストで返す内容をちゃんと考えるようにしている。
ただ、恐らくこれは両方の意味を含んでいるだろうと、母の性格を想像しながら考えた。
どうやら正解だったようだ。
母これまで、父経由で3回もインフルエンザに罹患している。もうそれは勘弁、という嘆きの意味を込めて、父のインフル罹患を報告してきたようだ。
ただもう一つの意味としては、年末年始は自分の好きなように過ごします、という宣言である。
実家には、父と母と、それから猫3匹しか暮らしていない。僕には姉がいるけれど、病院勤務だから年末年始は関係ないし、実家にも帰ってこない。年越しそばを食べるにも、おせちを食べるにも、初詣に行くにも、どれも夫婦二人で実施しているのだ。
今の父はステップファーザーだから、一般的なシニア夫婦よりもうちの夫婦は関係が良好だと思う。それでも、ずっと一緒に居るというのは窮屈らしい。
母はもともと一人で居ることが好きな人で、逆に一人で居る時間がないと発狂してしまうような人である。姉と僕がまだ幼かったころは、どうしても家族一緒に過ごす時間が長くなり、朝4時に起床して近所の運動競技場に走りに行っていた。睡眠時間を削ってさえも、一人の時間が必要な人なのだ。
そういう母にとって、一つ屋根の下で暮らすもう一人の人間がインフルエンザに罹患してしまったというのは、ある種幸せなことだと思う。
実際に、不意に生まれた一人の時間、幸せです。とLINEが来た。
たとえインフルから回復したとしても、調味料まみれのおせち料理を父は食べることができないだろう。母もおせちは全く好きじゃないから、早速おせちの代わりに、ジャムを作り、食パンを焼き、ケーキまで作ったようだ。
めちゃくちゃ楽しそうな雰囲気がLINEから伝わってくる。
考えてみれば、母の母、つまり祖母。彼女も、祖父が死んで、最初の1年くらいは相当病んでいたけれど、そこからは逆に一人の第二の人生を謳歌している。今は筋トレにも通う98歳になっている。
そして僕も一人が好きだ。うちはみんな一人が好き。唯一違うのが、血が繋がっていない今の父。彼は割と一人がダメなタイプ。
こう考えると、やっぱり遺伝ってあるのかなぁと思ってしまった。
とりあえず父の症状も既に良くなっているみたいだし、母はなんだか本当に幸せそうだから、インフルハッピーである。