HONEST

齢31歳。音声コンテンツ好きの僕が、日々の学びや気づきを、文章とイラストで自由に記録していきます。

10月8日 ご飯食べた?

日曜日、

 

 

これまでの人生の中で、身近な人に言われて印象に残った言葉は沢山ある。その中でも、特に僕の人生に影響を与えているものを、今日は紹介したい。

 

そもそも、『印象に残っている言葉は何か』、なんてことを突然思い出し始めたのも、9月から参加しているFlier book laboがきっかけだ。

labo.flierinc.com

 

(株)フライヤーが運営を担う、学びの有料コミュニティである。毎月、各業界の著名な方をゲストにトークセッションが開かれたり、実際に講座に参加できたりする。9月から参加したパーソナリティの一人が、電通のコピーライターの阿部広太郎さん。僕は、阿部さんの書籍の大ファンだ。僕が言うのも大変恐縮だが、文章のきめ細やかさ、紡ぎだされる言葉の丁寧さ、まるで潺のように緩やかに流れる文章が、水のごとく僕の体に染みわたっていく。

そんな文章を書く阿部さんのセッションの中で、リスナーへの質問として出てきた問い、それが「自分の周りの大切な人に言われて、印象に残っている言葉は何か?」だ。

僕が真っ先に思いついたのが、今回のタイトルにした「ご飯食べた?」である。

 

僕は、2013年から凡そ3年弱くらい、カンボジアとフィリピンに滞在していた。そのうち1/3は現地の大学への交換留学、2/3はインターンシップだ。

フィリピンでは、入国日の夜から大型台風が上陸し、翌日は大荒れ。外には全く出られない。大学の簡易宿泊所的な場所にいた僕は、かなり不安だった。そんな中、僕の部屋に来てくれたのが、用務員さんらしきおじさん。彼が一言に発した言葉、それが

「ご飯食べた?」であった。タガログ語だと、クマインカナ?だ。

 

え?なぜ?一言目がそれ?

と僕の思考はグルグル。そして、もちろん食べ物は持っていないし、大荒れでスーパーは閉まっているから買い物にも行けない。というか、どこにスーパーがあるのかも知らない。

そんな状況を見兼ねて、おじさんは近くの自宅に僕を招き入れて、奥様が作ったフィリピン風のお粥と、パンデサルというパンを出してくれた。

お粥には刻まれた生姜が入っていて、ゆで卵も上に載っていて、なんかもう涙が出るくらい美味しかったのを覚えている。

 

それから、実際に大学が始まって、仲良くなった友人の家に遊びに行く機会があった。そんなときも、その子のお母さんが放った一言目が「ご飯食べた?」だった。

 

あいにく既にランチは食べてしまっていたけど、フィリピンにはマリエンダという、おやつタイムみたいなものがある。手作りの揚げバナナを出してくれた。

僕の体も肥えたけれど、心も肥えた。

 

実は同じようなことがカンボジアでもあったのだ。

借りていたアパートの1階には大家さんが住んでいて、ほぼ毎朝顔を合わす。朝5時くらいから外の椅子に座っているから(笑)

そして、『ご飯食べた?』と聞かれるのだ。食べてないと答えると、そこらへんにある屋台に行ってきて、豚肉と米を買ってきて持たせてくれる。

 

更にオフィスに行くと、お局的な存在の現地スタッフにも『ご飯食べた?』と聞かれるのだ。食べてないと答えると、『!!!!それはダメ。ちょっと待ってて。下に行ってお願いしてくるから』と。

 

一応国際機関のオフィスだったため、用務員的な人が常駐しており、簡単な軽食は作ってくれたのだ。

 

この2つの国に共通する『ご飯食べた?』という挨拶。

あとで調べてみたら、東アジア・東南アジアでは良く使われているようだった。

なんでこの言葉を使うようになったのか、当時は当たり前の風景過ぎて現地の人に聞かなかったけど、きっとご飯を食べることがとても重要だと考えられているからだと思う。

フィリピンは、色々な国に支配されてきた歴史があり、台風も頻繁にやってきて、常に安定して食料が手に入るような環境ではなかった。

カンボジアは、本当につい最近までクメール・ルージュによる大量虐殺が起きており、食糧不足が長く続いていた。

そして、両方とも家族がまとまって安心して一緒に過ごす時間も、奪われていたのだと思う。

 

だから、ご飯を食べること、それは家族や仲間で食卓を囲むことが、きわめて大切な習慣として捉えられてきたのではないか、と思った。

 

もともと食べることも、料理をすることも大好きだった僕は、この経験がきっかけで、就職先の1社目は食品メーカーにしたのである。

 

飽食の日本、孤食の日本、細いことが良いとされる日本。

『ご飯食べた?」は、日本で改めて見つめ直す必要がある、大切なフレーズなのかもしれない。