木曜日、
「一緒に帰ろう」
社会人になってから、というよりも下校班という制度がなくなったくらいの頃から、僕はこの言葉とても嫌だった。
教室を出たら、オフィスを出たら、部室を出たら、
そこからはもう僕一人の時間と空間を過ごしたかった。一緒に帰ることは、まだ一つ前の状況が続いていて、ずっとそこから逃げられないような、そんな感覚を覚えることが多かった。
そんな望まぬ一言を今日はかけられた。
「〇〇さん帰ります?一緒に帰りましょう!」
まじか、、、。そう思ったけれど、向こうは悪気はないし、声をかけてくれた後輩は、割と仲良くしている後輩メンバーだから、そこまで嫌な感じはしなかった。
ただ、22時半も過ぎてだいぶ疲れていたから、ちょっと億劫だった。
部屋を出て廊下を歩き、階段を少し下がって、あとはエレベーターでエントランスまで降りる。他愛のない会話も別に苦ではない。
ただ、ここから更に駅までの道のりをずっと一緒なのかぁと思うと、ちょっとだけネガティブな感情が生まれた。
と思っていたら、建物を出るとすぐに
「じゃあ僕こっちなので!おつかれさまです!」という挨拶。
そうだったそうだった、彼は会社の近くに住んでいて、徒歩なのだ。駅の反対側に住んでいるから、みんなとは逆の方向に帰っていくのである。
なんか、この感じ、とてもいいと思った。
このくらいの距離感が理想かもしれない。
互いに好意があり、普段から仲良くしている。けれど、ずっと一緒ではなく、それぞれ別々の時間も大事、というかむしろ別々の時間があることがデフォルト。
どちらか一方は、実はギリギリまで一緒にいたいというわけでもなく、互いにケアしているけれど、あとは各々で、という余白がしっかり残っている。
ああ、こういうのが理想だなぁと思った。
一緒に帰ろうと声をかけることはとても良いと覆う。僕も今度はこちらから声掛けしてみて、そして会社を出たらパキッとそこで別れてみよう。
それが心地良いと思える人と、僕はつるんでいきたい。