水曜日、

確実に季節は変わっていっている。日差しの角度が斜めになるタイミング。このタイミングが、以前よりもだいぶ早い時間になった気がする。
時刻は午後4時。今日は、先週撮影したCMの編集作業に立ち会うため、午前中から編集スタジオで作業していた。早くから始めたこともあって、午後3時半くらいには仮編集作業は終了。明日、会社の執行役員達への試写を行い、問題がなければ最終編集に移る、今はまさにこのフェーズだ。
こうやって、TVCMとか、SNSとか、メディア配信するコンテンツ系の仕事に携わっていると、この世界は自分が回しているような錯覚に陥ることがある。
別に自分ひとりの力で作業が進んでいるわけではないのに、メディアという影響力が大きく、注目されやすいコンテンツに携わっているということだけで、自分がとても偉い人間になったような気がしてしまうのだ。
でも、そんな自分の凝り固まったプライドを、ちゃんと破壊するためにも、外に出るということはとても大事だと、改めて思った。
時刻は午後4時。編集が終わり、同行した後輩メンバーは帰社、僕はそのまま在宅勤務に移るということで現場で解散となった。
ここは、いわゆる東京のビジネス街のど真ん中。東京駅、有楽町、新橋、霞が関。巨大なビルが立ち並ぶエリアだ。どっしりと構えた一つ一つの建物に、午後4時の日差しが斜めの角度から当たっている。
一カ月前だったら、午後4時はまだ全然明るかった。それが今は、太陽が沈み始めるタイミングなのである。ビルの上半分がオレンジ色、下半分が影。こんな夕方のコントラストに魅了されていたのも束の間、スーツを着た人々が忙しそうに歩き回っている。
忙しそうにしているのはリーマンだけではない。自転車を漕いでいるワーキングマザー的な女性。学校が終わってこれから予備校に行くであろう高校生、仕事が終わって疲れている工事現場の労働者、こっからが本番だと車の前で文字通りストレッチを始めるタクシー運転手、今から出勤だという水商売風の女性。
この時間帯、街は今を生きている人にあふれている。
IT企業あるあるかもしれないけれど、午後4時なんて僕らからしたらまだ昼だ。朝が遅い分、夜が遅く、そしてマーケティング部門はだいたいオフィスに箱詰め。こんな風に、午後4時の街を歩くなんていうことはない。
ああ、なんかみんな本当にバラバラだけど、これがいいんだろうな。
みんな別々の目的があって、そこに対してとりあえずは生きてるんだろうな、そう思ったら、別に今自分がやっていることなんて、大したことでもなんでもなくて、他の人の仕事と対等なのである。
午後4時というのは、一日の中での第1ラウンドと、第2ラウンドのちょうど狭間のタイミングだと思う。一つ終わって次に向かう、この時間を生きるだれもが美しい。