HONEST

猫好き・植物好き・ラジオ好きの齢32歳。日々の学びや気づきを、文章とイラストで自由に記録していきます。

11月17日 魂

日曜日、

 

 

疲れている時や集中したいとき、僕は無性にクラシック音楽が聴きたくなる。特に、ピアノソロやピアノ演奏を中心としたオーケストラなどである。とにかく、自分にとって最も心地よく、かつモチベーションを上げてくれるのはピアノの音だ。

ピアノのクラシック音楽の中でも、僕はラフマニノフが好きだ。個人的に好きな演奏家である、辻井伸行さんや藤田真央さんの演奏はたまらない。朝、ランニングをしていると、その時はVoicyを聞いているのだけど、脳内の奥の方で、たまにクラシック音楽が聞こえてくる時がある。土曜日の朝に聞こえてきたのが、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番であった。たぶん、金曜の夜に、ラスト1時間のスパートとしてこの曲を聴いていたからだと思う。

ラフマニノフのピアノ協奏曲2番、僕にとってのこの曲は、浅田真央さんのソチオリンピックのフリー演技の映像と一緒に、脳内に焼き付けられている。

ソチ五輪が開催されていた2014年の2月、ちょうど僕はカンボジアに住んでいた。これが、人生における初一人暮らし、かつ初海外居住であった。カンボジアでも、NHKワールドは見れたし、Wifiは普通に使えたから彼女の演技を見ることができた。

前日のショートプラグラムは、かなり低いスコアだった。アメリカのNBCニュースでも、『ショートプログラムは壊滅的でしたね』と全米で放送していた。

僕も、ショートがそういう結果だったから、あまり期待していなかった。

 

ところがだ。

 

結論から言うと、こんなに引き付けられるフィギアスケートは見たことがない、というくらい魅了されてしまった。魅了というより、圧巻という表現の方が良いだろうか。

後で知ったのだが、2011年に彼女は母親を病気で亡くしていた。母不在となってから初めての五輪だったようだ。

きっと複雑な想いがあったのだと思う。彼女が滑ったフリープログラムは、美しいとか素晴らしいとか、そういうのではなくて、荘厳というか、切ないというか、何層にも重なった思いが数分のフリープログラムの場で一気に溢れだしたような、そんな重みがあったと思う。

息するのを忘れる、というのはこういうことなんだと、僕はその時思った。

やっぱり海外にいると、オリンピックというのは普段以上に日本人としてのアイデンティティを意識させるイベントで応援したくなる。結果として、彼女はメダルを獲得することはできなかったけど、彼女のフリーの演技は、ずっと僕の脳裏に焼き付いていて、カンボジアにいる間に何度もYouTubeで見ては感動をもらい、僕自身をふるい立たせていた。

演技最後の、ストレートライン・ステップシークエンスの場面では、今でも毎回泣いてしまう。彼女のお母さんへの感謝、スケートへの想い、オリンピックへの想い、そういうものが彼女の中から溢れ出て何とも言えない感動をもたらしてくれる。ラフマニノフのこの曲が最も盛り上がるところでもある。

この曲に代表されるように、ラフマニノフの曲は、一つ一つに彼の魂が宿っているように僕には思える。それくらい、どれも重い。そこに、真央さんの幾重にも重なる思いが重なり、魂の宿る重厚感のある荘厳な演技を作り出していた。

 

僕の魂に共鳴するこの音楽と演技は、これからもずっと僕の中で生き続けていくと思う。