HONEST

猫好き・植物好き・ラジオ好きの齢32歳。日々の学びや気づきを、文章とイラストで自由に記録していきます。

2月23日 生んだそばから孕ませる

日曜日、

 

 

人間だったらあり得ないことを、なんで動物にはできるんだろう。

 

猫の話である。

 

猫は、日が長くなると繁殖するようになる季節繁殖動物である。だいたい春先から秋口にかけてくらいの間に、街中でも猫を見る機会が増えてくるのは、このせいである。

だから、本来であればこの決められた期間の中で妊娠・出産をするのが普通なのだ。

しかし、一年に何度も生ませようとする人たちがいる。

ブリーダーである。

「一日に8時間~10時間、光を当て続けるだけでは足りません!12時間は当て続けてください。そうすれば一年中、妊娠・出産させることができますよ」

ペット業者が、新規ブリーダーに対して行っている講座の一幕である。

 

ここ最近、猫のブリーダーへの新規参入が後を絶たないという。

理由は明確。需要があることと、犬よりも簡単であるから。

コロナ禍で一気に猫の需要が高まった。犬と比べて散歩させる必要もないから、飼育も比較的簡単であろうと思った消費者が飼い始め、そこから需要がずっと続いているのである。

そして供給側でも、その容易さから、これまで野菜農家専業でやっていた高齢夫婦が、自宅の納屋で猫のブリーダー活動を始めた、なんていう事実もあるから驚きだ。

農家が多くいるような田舎だけの話ではない。マンションやアパートの一室でも、猫のブリーディングは可能だ。

上記の通り散歩をする必要がない。そして犬のように鳴かない。出入りさせる必要がなく、閉め切っていればいいから、臭いが漏れることもない。

多頭飼育崩壊の現場は、結構東京のど真ん中のタワマンの一室だったりする。

そうやって新しく増えてくるブリーダーに対して、需要に対して供給が追い付いていないペット業者側は、

「どんどん孕ませろ!どんどん生ませろ!」と、ワークショップを欠かさないのである。

 

猫の繁殖力は非常に高いから、高い確率で妊娠する。それでも人間と同じように、何度も出産させられた猫は、まず歯が抜け落ちてしまう。腰の骨がズタズタになってしまい、立てなくなってしまう。自分で動けないし、食べられない。

もう死ぬしかない。というか、処分するしかない。

 

そして、人間で禁止されているもう一つのこと。近親相姦。

え、猫でも近親相姦によって何か障害が残るの?って思うかもしれない。

残る。

ちなみに、耳が垂れているスコティッシュフォールド。あれは遺伝性疾患だ。ちょっと例えるのが難しいけれど、例えば僕らが何か障害を抱えて生まれてきて、それが本人にとってはとても嫌なことだったりする。でも、どんどんそういう遺伝子を持った者同士で強制的にSEXさせられたら、そういう子供がどんどん増える。

あれだよね、障害を持つ方に対して施行された、旧優生保護法の逆版。

やっぱりどう考えてもあり得ない。

 

これって同じことを人間にやらせたら、どういうことが起きるんだろうって、僕はいつも思う。それは興味本位でなくて、なんで人間に対しては非道極まりないということを、動物に対しては全然OKという形で認めてしまうのか、ということである。

 

これを解決するのは、決して容易なことではない。

 

犬と比べて、猫のペットショップでの販売が一般的になったのは、だいぶ遅かったという。なぜなら、猫は近所や親せきからもらったりすることが、以前は普通だったから。15年~20年前くらいをちょっと思い出してほしい。猫のペットショップでの販売数は、犬よりも少なかったと思わないだろうか。

当時は、猫を売っても全然売れないし、利益率も低かったようだ。

ところが、猫の需要拡大に伴い販売価格へ転嫁できるようになったから、犬よりも儲かるし、繁殖させやすいし、ということで供給側にとっても、消費者にとってもウィンウィンだったのだ。

 

本来であれば、保護された猫たちを助ける目的で、猫を家族として受け入れることが最も望ましいと思う。ただ、いまだに1万を超える猫たちが殺処分されている現状がある。これに対して、野良猫を一時的に捕まえて不妊治療を施し、また野に放つ、さくらねこ活動もまだちゃんと行われている。

これも、猫からしたら、なぜ?と思われるかもしれないが、どんどん増えてどんどん殺されることを考えたら、やむを得ないのだろう。

 

ただ、野良猫や保護猫の数が、こういう活動のおかげで減ると、猫が欲しいという人がもらえる場所が、どんどん絞られてくる。そう、ペットショップでの購入がどんどん増えてくるのだ。

そうなると、ペットショップでの猫の需要が増える→新規ブリーダーが増える→無理やり孕ませて生ませる、この循環が加速していく。

 

だから、そう簡単に解決できる問題ではないのだ。

 

長期的に見たら、正直希望を失ってしまいそうな大きな問題。

でも、今すぐにできることは、ペット流通に介入しないことだ。

つまり、ペット業者から購入しないことである。

池袋、新宿、渋谷、錦糸町。こういう夜の街になんでペットショップがあるのか。

酒を飲んで判断力が弱まった人が、結構買ってしまうからだという。

どこまでいっても戦略だ。でも、どんなに優れた戦略でも、倫理的に良い戦略と悪い戦略があることは、小さい頃に教わらなかったのだろうか

 

書いた通り、まだ1万匹以上の猫たちが殺処分されている。

探せば、飼い主を求めている人、団体、自治体はたくさんある。

だからどうか、ペット流通の中に介入して、生んだそばから孕ませる、ことを促進しないであげてほしい。

もしあなたが女性なら、それをされたらどう思うだろうか。

もしあなたが男性なら、家族にそういう女性がいたらどう思うだろうか。

 

太田匡彦

 

長々と書いてしまったが、僕がずっと追っている太田匡彦さんが、久々にポッドキャストに登場して、彼の直近の本について述べていたので、こちらも熱くなってしまった。

 

もともと、僕の母親が保護団体のメンバーで、僕は生まれて、家に連れて帰ってきたその時から、社会人で一人暮らしを始めるまで、ずっと保護猫たちと暮らしてきた。

AIDSウイルスを持つ猫、耳が聞こえない猫、人がとにかく嫌いな猫、たらい回しにあってきた猫

みんなかわいかった。

 

どうか、もうちょっとだけでいいから、一人ひとりが、動物を購入するということとは一体何なのか、ペットを迎え入れるということがどういうことなのか、それを考えてほしいと思う。

 

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